【講演1】

Q:耐震レジリエンス性能には、平時の経年劣化はどのように考えるのでしょうか。

A:ご質問ありがとうございます。本研究では、平時の点検や修繕によって必要な性能が確保されている前提での評価となっており、経年劣化の影響は考慮しておりません。
 なお、既存建築物については、日本建築防災協会の耐震診断基準において、経年劣化の影響を経年指標として構造耐震指標に反映する方法が示されておりますが、経年劣化の影響(ひび割れや鉄筋の錆等)を、個別部材の剛性や耐力といった個別の構造性能に直接反映する方法は確立されていないと思いますので、現状では評価は難しいものと思います。


Q:復旧性は、復旧工事がいつになったら実施できるのか、復旧工事により、性能を100%復旧できるのか、性能を従前より上げることはできないか、どのように考えるのでしょうか。

A:今回お示ししている研究内容は、標準的なモデルケースとして、無損傷の建築物が極稀に生じる地震にさらされた場合に、損傷の修復を行う場合を想定していますが、同様の考え方を適用すれば、性能が100%回復しない場合(今回お示ししたRCの事例では損傷が100%回復しないことを想定した検討も別途実施しております)や、改修により構造性能を上乗せするような場合(現状では新築建築物を対象としていますので、事前に必要な性能が確認できるようであれば、設計の段階で予め見込んでおく方が適切かと思います)の試算も可能になるものと思いますので、成果を活用する目的によって、想定も変わってくるものと思います。
 なお、復旧工事の開始時期については、今回ご紹介した最後のスライドで少し触れており、建物全体の損傷箇所を把握し(状況把握期間)、復旧予算や修復業者、資材の確保等ができた後(復旧計画準備期間の後)になりますが、後者については建築物の立地や社会情勢等の要因による影響が大きいため、現状では研究開発の対象外としております。


Q:建物の耐震レジリエンス性能の説明の内、鉄骨造の説明で、柱梁接合部の大梁の溶接接合形式において、スカラップ形状とノンスカラップ形状とで比較をされていました。これに関して下記について知見があれば教えて下さい。仕口部はノンスカラップ形式のブラケットタイプで、大梁継手部でフランジ現場溶接継手とした場合はスカラップ形状となりますが、この場合、レジリエンス性能はご説明頂いた2つのパターンの中間になると考えて問題ないでしょうか。

A:一般的に、地震時には、鉄骨骨組の梁の仕口部が塑性化して地震エネルギーを吸収し、梁継手部分は弾性挙動が維持されると考えられます。ですので、ご質問の形式の梁においては、レジリエンス性能は、ノンスカラップの梁端部として計算できると思います。


【講演2】

Q:建物の浮き上がりを考える場合、建物直下地盤の非線形性と併せて建物の沈下、浮き上がり現象が起こると思います。説明されたSRモデルでは水平方向のみで、上下方向の力のつり合い条件を考える必要が有るのでは、と思いますが如何でしょうか?
基礎の剥離や浮き上がるを考える場合、地盤の抵抗力は圧縮力のみで、ほぼ引っ張り力には抵抗出来ません。また、粘土の場合、粘性度が高いため、かなり荷重速度の影響を受けると思いますが、如何でしょうか(粘土の場合、粘性度が高い為、動的な応答値は荷重速度の影響を受け、応答値が静的な変形量と異なります。砂質地盤の場合、粘性が無い為、この影響は有りません)。
その結果、動的加振と静的加振では応答の値(変形値)は変わると思いまずが、このあたりのお考えは如何でしょうか?

A:既往文献(Sieber et al., 2020, EESD)では水平方向や回転の自由度に加えて上下方向の自由度も考慮されていますが、同文献に示されているように上下方向の自由度は計算結果にほとんど影響しないことから、今回は上下方向の自由度は考慮しておりません。
 ご指摘いただいた載荷速度につきましては、影響はあるものと想像しますが、どの程度応答に影響があるかはよくわかっておりません。今後の検討課題とさせていただければと思います。


【講演3】

Q:2番目のケースではエレベータに乗車する階をどのように決めたのでしょうか?

A:目的に応じた階に設定することも可能と考えますが、今回は実験という目的のため、わかりやすさを考慮し、建物の概ね中央の階で2本の階段とも同じ階でエレベーターに乗り換えるとしました。この場合、1つの階で2つのバンクのエレベーターが着床することが必要になるので、そのような階を用意することになります。また、今回の例では、一般の階でエレベーターに乗り換える形にしていますが、乗換階で火災が発生した場合の代替の乗換階を用意する、もしくは、火災の起きないよう乗換専用の階を設けるなど、建物ごとに必要な考慮が異なってくると考えております。


【講演4】

Q:水害時対策の費用負担について、立地の問題、どの程度が対策がそもそも必要か、等はアンケートにどのように含めているのでしょう。

A:個々の住宅に要する浸水対策の内容・費用を特定・提示したうえでアンケートで回答してもらうことは困難なため、あくまでも、床上浸水を防ぐ対策費用を支払う意向があるか・ないかについて尋ねました。ただし、立地については現在居住している場所における浸水深を踏まえて回答してもらっています。また、講演会当日はご説明しておりませんが、新築層・改修層ともに想定浸水深0.5m未満の世帯での支払意思額が高く、想定浸水深の高さとは必ずしも比例しないという結果が得られています。これについては、今年の6月頃に刊行予定の日本建築学会技術報告集に掲載していますので、刊行されましたらご覧いただければ幸いです。


【講演6】

Q:AI外壁診断は基準法10年の特定建築物に打診診断に代わるモノになるのでしょうか。

A:講演会でご紹介したAIによる画像診断は,目視検査で判定可能な変状が対象となります。したがって,打診等の目視検査の範囲を超える検査を直接的に代替できるものではなく,別途検討が必要と考えています。


Q:AI外壁診断はタイル貼りの外壁にも対応できていますか。

A:目視検査で判定可能な変状であれば,タイルが施工された外壁であっても何らかの診断ができる可能性があります。ただし,タイルの浮き等の打診検査が必要な変状については上の質問への回答を参照ください。


Q:チョーキングは判定できるのでしょうか? 劣化度1〜5の判定基準はどうなっているのでしょうか。通常の仕上塗材の塗膜は上塗りが割れていればすぐに塗り替える必要があります。したがって、塗膜に割れが発生する前の劣化状況を判定する必要があるため。

A1:>チョーキングは判定できるのでしょうか? 劣化度1〜5の判定基準はどうなっているのでしょうか。

 チョーキングの劣化度判定は目視検査のみでは困難であるため,講演会でご紹介した画像診断は適用できないと考えます。ひび割れの劣化度については,JIS K 5600 8-4 塗料一般試験法 塗膜劣化の評価 割れの等級を参考とし建築研究所でとりまとめた,建築研究資料No.145号,「2. 外装塗り仕上げ」,p49等を参考としています。

A2:>通常の仕上塗材の塗膜は上塗りが割れていればすぐに塗り替える必要があります。

 ご指摘のとおりと考えます。例えば10~15年周期で改修を実施していれば,割れが発生する前に塗り替えられる可能性が高いです。
 他方で,定期的な改修の実施が困難でチョーキングを許容せざるを得ないような建物もあるようです。こういった建物において最低限の躯体保護性能を確保するために塗膜のひび割れの診断を実施するという位置づけを考えています。


【特別講演】

Q:今後の住宅事情における、「薪ストーブ」の立ち位置は、どのような段階なのでしょうか。省エネプログラムに組み込まれない限り、展望が見込めないのでしょうか。

A:薪ストーブなどの熱利用に関しては、採用する原単位をどのように考えるのかが重要だと思います。
 省エネプログラムに関してはお答えできる立場ではなく、回答が難しいです。





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