■建築研究報告

市街地の土地利用計画に関する研究  
−新潟市の地域地区計画−

入沢恒, 日笠端, 大庭常良

建築研究報告  No.19,  1956  建設省建築研究所


<概要>
土地利用計画

  各種の都市計画あるいは都市計画事業を行うにあたっては、まず都市の将来の規模や性格におうじて都市の基本計画をたて、これにもとづいて綜合的に行うことが必要とされているが、市街地の用途や形態などを合理的に構成するため、現在都市計画の施設として行われている地域地区の制度も、基本計画の重要な部分である土地利用計画にもとづいて、考えられ計画されなければならない。
  これまでの地域地区の指定をみると、その指定にあたってはいちおう各種の調査が行われ、資料や統計が作成されているが、計画への結びつきが不明確であったり、他の都市計画部門との関連がうすく、綜合化がわすれられている傾向にあって、地域地区指定の妥当性がうすいように考えられる。
  また土地利用計画の構想がたてられているものをみると、その多くは現実の都市の社会的条件や経済的情勢を軽くみた希望的な計画で、それを実現化する地域地区制度の効果や内容と遊離し、また科学的といって必要以上の統計や資料をあつかい、複雑な計算のみに終わっている。
  ここに行った土地利用計画に関する研究は、できるだけ現実にそくして、現在行われている地域地区の制度を活用するため、新潟市を例として、その土地利用計画の基礎的調査や計画の立案方式を研究したものである。
  前述のように、地域地区制に結びつく土地利用計画は、たんに希望的な図面であってはならない。できるだけ現実の状態にあい、また実現できるものでなければならない。このためにはその前提として、都市の将来の規模や性格をあるていど正確にみとおすことが肝要である。
  いま土地利用計画の立案方式を考えると、つぎのようになる。
  すなわち、市街地の土地利用計画をたてるには、その前提条件として、まずその都市の人口、産業などの過去から今日にいたるまでの動態や、あるいは地形などの自然的条件や周辺勢力圏との関係について調査し、これにもとづいてその都市の将来の規模(人口)、性格(産業・機能)の構想をたてる。
  さらに現在の人口分布や、市街地の建物構成、土地利用構成などを調査し、密度・配置・動線を分析して、将来の人口・産業を収容しうる市街地区域の決定や、必要な各種の地域の配分などの土地利用計画をたてるということになる。


土地利用計画の立案方式

新潟市の地域地区計画

  この研究において対象とした新潟市の地域地区の主体をなす用途地域は、本文で説明するように、いく度かこれまでに変更されてきたが、現行のものは戦前に指定されていた用途地域を、市街地建築物法が建築基準法に改正されたさいに、部分的に修正されたものである。
  しかしながら、終戦後10年ちかくをへて、この地域指定は市街地の現況にてらしてみても、また将来の動向を考えてみても、実情にそぐわない多くの問題を生じてきている。
  すなわち、市街地の発展にともなう都市内部の土地利用構成の変動、市街地の周辺部における住宅地の開発、新潟駅の移転にともなう新しい駅前地区の土地区画整理、また綜合開発計画にもとずく電源開発を動機として予想される工業地帯の造成、およびこれに附帯する住宅地の開発などがその主となるものである。
  このような状態にあるため、現在の地域指定を改正する必要が生じ、たまたま新潟市当局より、地域地区計画に関する調査と計画立案の依頼をうけたので、研究課題として新潟市の地域地区計画をとりあげた。
  前に述べたように、地域地区指定のための土地利用計画は都市基本計画の一環をなすものであり、その立案のためには綜合的な基礎調査を必要とするものである。しかしながらこのためには相当の費用と時間とを必要とし、また今回の場合は当面必要とされる地域指定の再検討にかぎられたため、必ずしも十分な綜合的な基礎調査を行うことができなかったが、地域地区指定に直接必要な事項や、その前提となる重要な事項についてはできるだけの調査を行い、計画立案することとした。
  なお広域の都市計画については、調査当時に周辺町村の合併の機運があったので、これは今後の問題とし、また勢力圏調査もつぎの機会にゆずることとした。
  基礎調査は昭和29年4月より新潟市建設部の協力をうけて行われ、同年11月それを完了した。その後計画立案に着手し、昭和30年1月に成案をえ、これにもとずいて今後地域地区の指定変更などが行われる予定である。
  なおまた、計画は将来の予想にもとずくものであり、社会経済条件の変化により、計画の前提条件も変化するものであり、また現在の地域地区の制度は何らの事業もともなわない施設計画であるから、その完全な効果は期しがたい点がある。したがって、この計画は不変なものではなく、都市の発展変化に応じ、5年ごとに計画の再検討を行うことが必要であると考えられる。
  たまたま昭和30年10月1日、新潟市の中心市街地に約1000戸を焼失する大火があり、その復興にあたり計画も小部分変更する予定であるが、これを機会に地域地区計画は早急に推進される予定である。

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