■建築研究報告

高強度プレストレストコンクリート杭の曲げせん断実験

杉村義広,  中田慎介,  川島俊一,  阿部道彦

建築研究報告  No.106,  June  1984,  建設省建築研究所


<概要>

  1978年宮城県沖地震の際に被害を受けた高強度プレストレストコンクリート杭の破壊性状を再現する目的で,杭体の曲げせん断破壊試験を行った。試験は,まず杭体の基本的構造性能を調べるために,せん断スパン比3.33および2.22の杭単体2体について,単純梁方式曲げせん断試験を行った。次に,地震被害様相を再現するために,一端をフーチングにより固定し,一端をピン支持としたそのほぼ中間に,集中繰り返し荷重を与える加力方式を考案して試験を行った。この加力方式は,基本的には地中部の杭に生じていると考えられる曲げモーメント分布を再現しようとしたものであり,さらに杭の被害様相を考慮して考案されたものである。試験体はフーチングとの接合方法を変えた3体であり,せん断スパン比はいずれも2.24である。
  実験の結果としては,杭単体の場合,せん断スパン比が3.33の試験体は曲げ破壊を生じ,せん断スパン比が2.22の試験体はせん断破壊を生じた。また,フーチング付き杭試験体は,いずれもせん断破壊を生じ,地震被害様相と酷似した状況を示した。注目すべきは,せん断ひびわれ強度の実験値が,日本建築学会プレストレストコンクリート設計施工規準・同解説に示されたせん断耐力算定式(プレストレストコンクリート杭の場合も通常はこの式を準用していることが多い)による計算値に比して,3〜4割小さい値を示したことである。これは,せん断スパン比が関係したこととあわせ,加力方式に起因する円周曲げモーメントによる杭断面のつぶれ変形が,とくに強く影響したことが原因である。円筒断面の場合には,この種の変形が生じやすい傾向があり,杭体のせん断耐力の低下を誘発する可能性が高いので,今後はこれらの影響をも考慮したせん断性能を検討することが重要である。


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