火災に強い建物/超高層建物の柱や梁は耐火被覆で守られている

 建物火災を実際に見たことがありますか? 江戸時代の建物の多くは木で造られていましたので、江戸(今の東京)では一旦火災が起こると町全体が焼け野原になるような大火を何度も経験しました。そのため、火災から財産を守るために燃えやすい木ではなく、土を厚く塗った土蔵などが造られてきました。明治になると、建物にはレンガ、コンクリート、鉄などの燃えない材料が使われるようになりました。建物や都市を燃えない材料で造れば、火災に強くなると考えたからです。
 確かに燃えない材料で造られた建物そのものは燃えませんが、我々の身の回りには、着るものや家具などの燃えやすいもので溢れています。コンクリートや鋼で作られた建物でも、その中に燃えるものがあれば火災は起こります。そして、ただ建物全体に燃え広がるだけでなく、火災で建物が壊れてしまう場合もあります。
 写真に示す超高層建物の柱や梁は、鋼で造られています。もちろん、このような鋼の柱や梁は燃えません。(余談ですが、細く線状にした鋼は良く燃えます。)しかし、鋼の柱や梁は燃えなくても高温になると強さを失います。一般に使われている鋼は1200〜1500℃の温度で解けてどろどろの液状になってしまうのです。それほどの高温にならなくても、火災による熱にさらされると鋼の柱や梁がアメのように曲がる位柔らかくなります。
 このような火災による高温から建物を守るためにはどうすれば良いのでしょうか。答えは身近な台所にあります。ガスコンロで料理している場合を思い出して下さい。熱い鍋を持ち運ぶ時には、料理用の厚い手袋(ミトン)を使いますね。これは熱さから手を守るためです。厚い布の生地は鍋の熱が手に伝わることを防いでくれるのです。
 同じように火災の熱が鋼の柱や梁に伝わることを防ぐことができれば良いのです。料理用の厚い手袋の役割を果たすものが「耐火被覆」という断熱性の高い材料です。耐火被覆は火災の高温にビクともせず、熱を伝えにくい性質を持っています。鋼の梁や柱を耐火被覆で包むことにより、火災からの熱を遮り、鋼の温度を低く保てます。このような火災に強く安全な建物をつくるためのさまざまな研究を建築研究所では進めています。
 (建築研究所 防火研究グループ 茂木武)


耐火建築物


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